コメダが創業時から55年間、喫茶店として大切にしてきたものは、お客様の“くつろぎ”です。自宅のリビングルームのように普段着のままゆったりとくつろいでいただける“くつろぐ、いちばんいいところ”になることこそが、コメダのあるべき姿であり、価値だと思っています。
もちろん、コーヒーやスナックメニューを召し上がって「おいしい」と喜んでいただくこともありがたいのですが、やはり“くつろぎ”を感じていただくことが一番です。先行き不透明で予測がつかない時代だからこそ、不安やストレスを抱える人たちが心からホッと一息つける場所は、もはや地域のインフラだと考えています。
コメダ珈琲店としてそのインフラを支えているのは、中期経営計画「VALUES 2025」の目標である『“くつろぎ”で、人と地域と社会をつなぐ』ために地域密着の店舗運営を行ってくださる、フランチャイズオーナー様です。だからこそ、フランチャイズオーナー様との絆をより強固なものにし、共存共栄でお客様の“くつろぎ”の空間をつくりあげる。それこそが本部としての使命です。
お客様が感じる“くつろぎ”は、お客様によって、またそのときのコンディションによって異なります。コーヒーを提供するだけでなく、心からくつろいでいただける空間をどう創るか。それはデジタルが進化した現代社会においても「ひと」にしかできない仕事だと思っています。こうした、「ひと」による「ひと」にしかできないビジネスを行っている以上、人財育成のための投資は、おのずと力を入れなければならないものであり、私自身も強く進めていきたい部分です。
お客様に寄り添い、“くつろぎ”をつくり出すためには、スタッフ一人ひとりがマニュアルに頼らずお客様との距離感や空気感を肌で感じ、考えられるようにならなければなりません。その手助けとなるべく、年に一度、「全国接客コンテスト」を開催しており、昨年は約8,000人ものスタッフに参加いただきました。私も立ち会いましたが、お客様への想いがあふれる素晴らしい接客に目が潤むほど感動しました。
この「ひと」によるビジネスは今後デジタルがより進化していったとしても、変わることはありません。コメダでもDX推進を行ってまいりますが、単にコスト減のための省人省力ではなく、効率化を図った先にあるのは、やはり飲食店の基本であるQSC(Quality:商品の品質、Service:接客サービス、Cleanliness:店内の清潔さ)の向上とりわけ“S”、すなわち“コメダ流おもてなし”の向上です。すべてはお客様の“くつろぎ”に還元できなければ意味がない。スタッフそれぞれが“コメダ流のおもてなし”を習得しようと日々腕を磨き、お客様と心を通わせながらつくり出す心地よい空間こそが、コメダの価値なのですから。
心の“くつろぎ”を考えたときに、切っても切り離せないのがサステナビリティです。コメダでは、お客様の“くつろぎ”がいつまでも続くように、マテリアリティ――重要課題13項目を特定し、経営のど真ん中に据えました。13項目は大きく3つのテーマに分けられます。品質とお客様に関するテーマでは、安全・安心を土台にして地域のお客様の多様なニーズにお応えすること、人と働きがいに関するテーマでは、そのための人財育成と基盤づくり、そして環境に関するテーマではすべての事業の前提となる環境を維持するため、気候変動への対応や資源循環を取り扱います。
それぞれ管掌をする取締役とともに具体的なアクションプランに落とし込み、全社を挙げて取り組んでまいります。これらはすべて、お客様に“心にもっとくつろぎを”感じていただくためのミッションであり、100年後もコメダが“くつろぐ、いちばんいいところ”であるために欠かせない取り組みだと考えています。
中期経営計画「VALUES 2025」では、『“くつろぎ”で、人と地域と社会をつなぐ』ことを目標とし、コロナ禍の影響を受けた業績の回復だけでなく、既存モデルの拡充、新しい共創価値の追求、財務価値の維持拡大に取り組んでまいりました。足元では2022年10月の香港、2023年1月のバリ島などの、海外を含めた出店計画の推進。また、コロナ禍で失ったお客様の再常連化を進めるべく、季節限定メニューなどを展開する一方で、フランチャイズオーナー様方とともに地域に密着したお店づくり、QSC向上に努めてまいりました。その甲斐あって、業績については順調であり、上方修正も行いました。
ただ、今後を考えると次の成長エンジンや柱となる事業を仕込まなければ、という思いもあります。もちろん、2022年4月にオープンした「コメダの大判焼き大餡吉日」など、新サービスの開発や、姉妹業態である「おかげ庵」の本店開業をきっかけとする進化と出店加速を推進しております。今後はさらに新たなサービス分野について、会社のトップとして、自らもまた率先してGRIT――粘り強くやり抜いてまいります。
これからもコメダは、フランチャイズオーナー様をはじめ、すべてのステークホルダーの皆様と手を取り合い、お客様とともに“くつろぐ、いちばんいいところ”を共創し続けます。お客様の“くつろぎ”が変化するように、私たちもまた進化を続けてまいりますので、ぜひご支援、ご愛顧のほど、よろしくお願いいたします。